犬と主従関係

これまで犬が指示に従わない場合には、ホールドスティールやマズルコントロールというような、犬を拘束し、力を示してで従うようするという方法がありました。

しかし、これでは本当の意味での良い関係は築けません。トレーニング方法が「強制訓練(陰性強化)」から「褒めるしつけ(陽性強化)」へシフトしてきたことにも、そういった意味が含まれます。

犬を恐怖心や力でコントロールするのではなく、犬と飼い主さんの両方が楽しく継続できるトレーニングのほうが、より良い関係が築けます。人同士だって、失敗したときに叩いたり、怒鳴ったりするような、絶対的な力で支配してくる相手よりも、できたことを自分のことのように喜んで褒めてくれる相手のほうが一緒にいたいと思いますよね。

飼い主さんに意識してもらいたいことは、「コミュニケーションのとり方」や「どんな風に関係を築いていくか」という過程の部分と、「家族内のルール」をしっかり決めることです。たとえば、「一緒に寝たいからベッドOK」という飼い主さんや、反対に「毛が抜けるからベッドには乗せたくない」という飼い主さんもいます。それは、その飼い主さんがどこまでを許し、どこからをダメとするかであり、主従関係の考え方とは違いますよね。

もちろん、ベッドOKであっても飼い主さんの指示で降りるようにしつけることは必要です。大切なのは、飼い主さん自身が愛犬とどんな関係を築きたいかということと、そのためには愛犬の性格やこれまでの経験を理解し、しつけの方法を考えてあげるということです。

主従関係より信頼関係をつくることが大切

近年の研究によると、犬には主従関係という概念がないことが分かってきているため、飼い主が必ずリーダーになろうと無理矢理しつける必要はないと言えます。しつけの際は決して大声で叱ったり叩いたりせず根気よく続け、毎日愛情を持って接することが犬との信頼関係の構築につながります。

犬と信頼関係ができていないと、飼い主の指示を無視したり問題行動をとってしまいます。

どのくらい犬と飼い主とで信頼関係ができているかは犬の行動や態度を観察すると分かります。

そこで、ここでは愛犬にどのくらい信頼されているかのチェックポイントを紹介しますので、ぜひ確認してみてください

①仰向けになってお腹を見せてくれる

犬が目の前で仰向けになるしぐさは、信頼している相手にしか見せません。敵には絶対に見せない急所のお腹を見せるということは、飼い主に対して敵対心がなく安心感を抱いていることになります。寝ているときや撫でているときにひっくり返ってお腹を見せてくれるのであれば、犬はとてもリラックスしている証拠です。

 

②アイコンタクトをとってくる

犬が飼い主とじっとアイコンタクトをとる行為も信頼関係ができている証拠です。犬が知らない犬や人間を敵と見なしてアイコンタクトを取っている場合は警戒していることをあらわしています。しかし飼い主は犬にとって知らない人ではないので、飼い主とアイコンタクトをとる場合は「仲間として認識し、信頼している」という気持ちを伝える行為となるのです。

③一人でいるときも落ち着いている

飼い主が外出したり、少しの間犬の近くから離れる際に吠えたりせず落ち着いている場合は信頼関係が築けている証拠です。犬は本来群れで行動している動物なので、一人になると不安を感じます。そのため、飼い主の外出時に吠えたり騒いだりしてしまう場合は依存しすぎているなど犬と飼い主の関係の構築で改善点があるといえます。

一方、飼い主の外出時も犬が取り乱さずに静かにじっとしている場合は飼い主のことを信頼して家で落ち着ける自分の場所を築けていると言えます。